秋の里山を埋め尽くす「葛=クズ」の話

クズの話アイキャッチ
えつ

こんにちは。管理人「えつ」です。今年は10月半ばを過ぎても、まだ「夏日」「真夏日」が続くという異常気象。なんとか涼しくなったので久しぶりに散歩に出かけたら、いたる所を占拠していたのはなんと「クズ」でした。
ゴミの「屑=クズ」ではなく、植物の「葛=クズ」ですよ。
そんなわけで今回は葛の生態や利用法についても調べてみました。

秋の里山はクズだらけ

今年もひたすらに暑い夏でした。
熱中症警戒アラートも何回発令されたことか…おかげでほとんど散歩には出かけず。
やっと出かける気になったのは、10月を過ぎてからです。

秋の里山の風景を…なんて思いましたが…こんな状態です。
この日も10月半ばなのに「夏日」で太陽がまぶしい。

くずの山に立ちつくす

道路わきを一面、覆っていたのは「クズの山」です。
さらに道の反対側には「クズの海」が広がります。

くずの海

しかも車道にまではみ出しているではないですか。

さらに!電灯にも、まるごと覆いかぶさっていました。
まるでオバケのようです。

おかげで夜に電気がついても真っ暗という異常事態に。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう。

クズ帝国の誕生

自宅での草刈りをしながらも、クズが攻め込んで来るスピード感は感じていました。
クズはツル性の植物なので、いくら刈りこんでも負けずにツルを伸ばしてきます。

この1~2年は温暖化の影響なのか勢いを増していて、このままでは我が家も呑み込まれて「クズ屋敷」に?

家に忍び寄るくず

「♪だるまさんがころんだ」と同じ感覚で、ちょっと目を離したスキにあっという間に攻め込まれます。
特に勢いがあったのは梅雨明け頃でした。

地下茎で増えるスギナやドクダミにもずいぶん手こずりましたがクズの方が手ごわい相手です。先端のツルだけを刈っても、本体である根元を刈り取らないことには、解決できず。
しかも根元がどこにあるのかなんて、見当もつきません。

クズは日本から海外にも持ち込まれた植物ですが、IUCN(国際自然保護連合)はクズを「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定しています。
近くにいる他の植物に覆いかぶさりながら自分たちの陣地をじわじわと広げていく。
そんな様子からアメリカでは「グリーンモンスター」と呼ばれているそうです。

からみつかれたり上からおおわれてしまった植物は日光が当たらなくなってしまい、枯れてしまうことも。
そんなわけでクズに侵入された一帯は「クズの帝国」になってしまうのです。オソロシヤ。

クズ帝国のイラスト

クズの習性、ここがスゴイ!

ここでクズの習性を少しご紹介しておきましょう。
マメ科でツル性のクズは、こんなスゴイ技で自分たちの陣地を広げていきます。

まず横への移動は、ツルを使って地表を自由に這っていきます。
さらに縦方向にも移動することができます。私は「からみつき攻撃」と名付けました。
近くの木、フェンス、電柱…なんにでも巻き付いてよじ登って行きます。

最近では太陽光発電のソーラーパネルにまで入り込み、発電がストップすることもあるそうです。

さらにスゴイのは、自分のクローンをどんどん作って増殖していく技です。

ツルの先に「結節けっせつ」と呼ばれるコブ状のものができ、そこから芽を出します。
この結節が地面に接すると、そこにまた新しい根を生やすこともできるのです。

くずは結節から根が付く

刈り取ったツル先をうっかり土の上に置いておくと、そのまま根付いてしまうことにもなりかねません。

なすのごとく

恐るべし、グリーンモンスター!生命力が強いんだね。

グリーンモンスタークズー

恩恵を受けて来た歴史

ここまではクズをまるで悪者扱いしてきましたが、恩恵を受けてきた歴史も忘れちゃいけませんよね。
ちょっと振り返っておきましょう。

くずの利用

クズの根に蓄えられたデンプンを利用した「葛もち」や「くずきり」など、おいしい和菓子はたくさんあります。

特に、冷たく冷やして夏にいただく葛スイーツは最高です。
奈良県の「吉野本葛天極堂てんぎょくどう」の葛もちは絶品ですよ。

京都祇園の「鍵善良房かぎぜんよしふさ」のくずきりも是非、お店で。

風邪をひいた時にお世話になる葛根湯かっこんとうもクズの根を利用した生薬です。血行を促し、カラダを温める効果や鎮痛効果があります。

さらに時代をさかのぼり、新石器時代(縄文時代)には既にクズのツルを天然繊維として織物に利用していたとのこと。

なすのごとく

そんな昔からクズを活用していたんだね。
布や衣服にすることができる上に、食用にも、薬にもなるなんて。

えつ

太古の時代には「クズの帝国」=宝の山だったのかも。

そう言えば、クズは「秋の七草」の1つでもあります。
やはり古くから身近な野草として人々に愛されていたのではないでしょうか。

秋の七草イラスト

日本人がクズにお世話になって来た歴史は想像以上に古く、生活に密着していたんですね。

新しい活用法も

愛すべき野草、有用植物だったクズは、利用する機会が減ったことで「グリーンモンスター」に変貌してしまいました。

かつては人々が栽培していたクズたちが雑草化してしまったのが現代の「クズの帝国」です。
うまく活用できていれば、ここまで里山ではびこることはなかったのかもしれません。

えつ

活用したいとは思うけど、シロウトがクズの根っこを掘り上げて加工までするのはムズカシイなぁ。

吉野本葛天極堂では過去に「葛の根掘りツアー」を開催していますが、やはりクズの主根は
大きく、1人や2人で掘り上げられるものではありません。

天極堂では新しく、こんな商品開発もしています。
吉野の葛から酵母乳酸菌を取り出すことに成功したそうです。


葛からできた乳酸菌で作るヨーグルトの素」という商品もあり、とても興味深いです。
こちらで確認できます。⇒吉野葛天極堂公式オンラインショップ

クズの乳酸菌で作るヨーグルト、ぜひ食べてみたいですね。


クズの帝国を通り抜けながら里山を歩き、秋の便りもいくつか見つけることができました。
今年もかわいいどんぐりを拾って帰りました。

里の秋写真

えつ

吉野本葛天極堂から「葛の本」が出版されています。
これを読んだら、クズのことをもっと深く理解できそうです。
グリーンモンスターのイメージも払しょくできるかも?

なすのごとく

クズの手軽な利用法が見つかるといいなぁ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。