かわいい菓子箪笥との出会い

菓子箪笥アイキャッチ
えつ

こんにちは。管理人の「えつ」です。以前、茶道のお稽古をしていたご縁で
珍しい菓子器「菓子箪笥かしだんす」を譲り受けることになりました。
どうも古い時代のモノらしく…ぜひブログでもご紹介したいと思いました。
茶道や骨董品に興味のある方には特にオススメな記事です。

1.松竹梅の菓子箪笥!

長年、茶道の教授者として情熱を傾けてこられた宗房そうほう(茶名)先生。
昨年(2023年)、82歳で他界されました。

師弟関係ではなかったものの、近しい間柄であったことから、
いくつかのお道具を譲っていただくことに。

遺された茶道具たち

ご自宅のお茶室にはたくさんのお道具たちが眠っていました。
由緒あるお道具も多く、その中に珍しい菓子器が。

茶色い布は更紗(さらさ)でしょうか…細かい文様の木綿生地です。
上から白い布が張られており、そこに
11代慶入隠居印 松竹梅菓子ダンス」の文字。

外包みから木箱のヒモ

包みをほどくと…ひも掛けの木箱が登場。
これはたしか四方掛け(よほうがけ)という結び方…
あ~、結び方、忘れちゃったなぁ…(滝汗)

木箱の蓋を開ける

とりあえず先へ進むため、ひもをほどいてフタを開けます。
…今度は白い布に包まれて登場。
なかなか対面できません。(笑)

布を開いて箪笥を取り出す

包みの中から現れたのは、こんなにかわいい箪笥でした!
陶器のひきだしが3つ、側面にはそれぞれに松、竹、梅の絵柄。
菓子を取り分けるための箸も前後にセットされています。

菓子箪笥角度を変えて

ひきだしは約8cm四方で、よく見ると松⇒竹⇒梅と、
下の段ほど深さが増しています。

箪笥のひきだし

このひきだしの中に干菓子(ひがし)を入れて茶席に出していたんでしょうか。
かわい過ぎますねぇ。

2.菓子箪笥とは?

菓子箪笥は落雁(らくがん)州浜(すはま)などの干菓子を
しまっておくための入れ物としていたのがルーツのようです。
今では茶席で取り回し、ひきだしの開け閉めの所作を楽しむように。

えつ

今まで茶席で見かけたことは無かったなぁ。
どうやって扱うのかな。

初めに菓子を取る人は、下段から順に開け、1つずつ菓子を取っていきます。
(上から開けると下の段が見えなくなっちゃいます。)
全てのひきだしを開けたままで次の人へ箪笥を送ります。

次の人は上の段から菓子を取ってひきだしを閉めます。
順に菓子を取っては閉めていく。
全てのひきだしが閉まった状態でそのまた次の人へ。この繰り返し。

菓子箪笥の作法
なすのごとく

なるほど~、一段ごとにお菓子を取っていただくんだ。いいなぁ。
それに理にかなった動線だよね。

3.11代 楽 吉左衛門「慶入」

さて、気になるのは「11代 楽吉左衛門らく きちざえもんの文字。
さらに「慶入けいにゅう隠居印いんきょいん」…とは?

えつ

楽吉左衛門と言えば、千利休(せんのりきゅう)の時代から代々、茶碗師
として襲名されているお名前です。

こちらのサイトもご参考まで。
公益財団法人 楽美術館公式サイト「楽焼の発祥」
ご当代は16代2019年に襲名されています。

楽家では次代へ名前を引き継ぐと隠居の身となり「」の字を含む
「入道号」をいただくそうです。

なすのごとく

11代「慶入」さんはこんな人だったらしい。

11代「慶入」(1817~1902年:文化14年~明治35年)
10代「旦入」の娘の婿養子となり1845年に11代楽吉左衛門を襲名。
明治4年(1871年)に剃髪隠居して「慶入」となる。
茶碗以外にも茶器や置物など、歴代の中で最も多様な作域を示した。

なるほど。だんだん事情がわかってきました。
そして隠居印は…?ここにありました!
ひきだしの裏側です。

11代慶入印

慶入さんはこの「隠居印」を55歳から亡くなる86歳まで
使用されていたようで「白楽しろらく」とも呼ばれています。

…ということは…明治時代に作られた作品でしょうか。
江戸から明治と言えば、日本が多くの伝統文化を手放してしまった時代。
慶入さんはどんな想いで創作活動をされていたんでしょうね。

4.ちいさきもの

菓子箪笥がすっかり気に入ったので、こんな菓子箪笥も入手しました。

手乗りサイズの菓子ダンス


金沢の「落雁諸江屋本店」(らくがんもろえやほんてんの菓子箪笥。
小さな手乗りサイズで素材は和紙です。

小さくても収納量は抜群ですよ。
中の干菓子も…本当に美しくてかわいらしいですね。
優しい甘さにも癒されます。

引き出しを開けた菓子ダンス
箪笥の中の干菓子

小さな道具って、見ているだけでなぜか幸せな気分になります。
ひな人形の飾り道具しかり、リカちゃんハウスも…
小さいものに夢中になっていた時代を思い出しますね。

「小さいもの」と言えば、枕草子にもこんなフレーズがありました。

清少納言と巻物
清少納言 枕草子 うつくしきもの

平安時代の「うつくし」は「可愛らしい」という意味で
使われていたそうですね。
小さいものを「カワイイ」と感じる心は今の時代も変わりません。

江戸末期から続く、金沢の和菓子屋「諸江屋」さん。
加賀藩は茶道の普及にも力をいれていましたからね。
種類も豊富にそろいます。

5.さいごに

珍しい菓子器「菓子箪笥」をご紹介しました。
11代楽吉左衛門「慶入」隠居印がホンモノ?だとすると
明治時代の作品です。

幾重にも包まれていた菓子箪笥を見て感じたこと。

えつ

布や木箱にひも掛け。
すべて道具を大切にする気持ちの表れなんですよね。
今まで、こんなにモノを大切に扱ったことって…無いかも。

忘れ去っていた「四方掛け」も調べて結び直しました。(笑)
こんなインチキ茶人の元にやって来た菓子箪笥。

宗房先生や、その前の持ち主だったどなたかにも安心していただけるよう
大切にします。

そしてどんなに気に入って大切にしていても…
この世を去る時に持って行くことはできないので…
次の持ち主になる方へ引き継ぐことも心得つつ。

何かインスピレーションが降ってくるような予感もしています。(笑)

なすのごとく

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
諸江屋さんは粒あんをはさんだ生らくがん「濃茶落雁」もオススメだよ。