1.食べ物の有無が国力を分ける時代
小泉武夫先生は発酵学の第一人者です。
発酵食に関する著書や世界の珍しい「食文化」に関するエッセイなども多数出版されています。
今回ご紹介する「賢者の非常食」は東日本大震災(2011年3月11日)の後、
小泉先生が急遽、書き下ろすかたちで出版されました。
先生ご自身も福島県のご出身です。
小泉先生と言えば、軽妙な語り口で書かれる楽しい著作が多いのですが、
「賢者の非常食」では厳しいコメントも多く見られました。
今回の大地震とそれに伴う大津波は、我々に多くの教訓を残しました。(中略)
小泉武夫「賢者の非常食~はじめに~」より
大切なことは、私たちがどのような食べものを日頃から食べ、貯蔵し、持ち出せば
いいかについての正しい知識を持つことです。
いつでも売っているものをとりあえず買い占めたとしても、何の意味もありません。
さらに、日本の食料自給率が40%を下回る低さであることについても。
これからの時代における食糧は、単なる食べものではなく、国にとっては兵器にも
小泉武夫「賢者の非常食~はじめに~」より
等しい貴重なものです。冒頭でも述べた通り人間は食べなければ生きていけないので、
食糧が足りない国は、売ってくれる国に媚びなくては存続できません。
これが、独立国家の姿でしょうか。
売ってくれるものなら何でもありがたく買わなければならない立場の国では、
防腐剤や抗生物質入りの食糧であっても、イヤとは言えません。つまり、自国での
生産ができないということは食の安全も侵されてしまうということです。
これは今、まさに日本が追い込まれている状況ですよね。
コロナ~戦争の影響で世界中の国が資源、物資の調達に不安を抱いています。
資源も少なく、食料自給率が低い日本はいっそう厳しい状況に?
つまり、すでに非常時ってこと?
こんな状況でまた震災が起きたら~…どうしよう?
震災やコロナの時には、あっという間に商品が店頭から消えたのを思い出します。
2.非常時に役立つ食べものは?
まずは焦らず、できることを探しましょう。
非常時に役立つ食べ物は何か。
小泉先生は「日常生活でも元気の源となる食べもの」と定義しています。
「非常時こそ、いつも食べている基本的な食べものが必要である」と。
「いつも食べてるもの」ってヒトによって違うんじゃない?
それはね。日本人が長い歴史の中で食べ続けてきたものってこと。
つまり和食のことなんです。
日本人の体に合っていて力が湧き出る食べもの=和食です。
中でも健康効果があって日持ちする食べもの…と言えば…?
わかった!発酵食だ!
小泉先生は発酵食品の中でも「かつおぶし」を「究極の非常食」として紹介しています。
かつての名女優でありエッセイストでもあった「沢村貞子さわむらさだこ」さん
(1908~1996)が関東大震災に被災された話(当時14歳)を取り上げていました。
震災時、一足早く、1人で逃げなければいけなくなった時にお母さんから渡されたのが
「かつおぶしと湯ざましの入った鉄瓶」だったそうです。
沢村さんはかつおぶしを湯ざましに溶かして飲みながら、助けがくるまで
生き延びられたとか。
リアルな体験談だなぁ。
確かに、非常時にたくさんの荷物を持ち出せるとは限らないよね。
削りタイプではなく、1本丸ごとを非常用リュックに入れておくのがオススメだそうです。
噛めなくてもしゃぶればOK。タンパク質が摂取できます。
人間の体はタンパク質(アミノ酸)からブドウ糖を作ることもできるため、数日間であれば
かつおぶしと水だけで命が保てるそうです。
かつおぶしをしゃぶりながら生き延びる…そんな日が来ないことを祈りますが。
3.賢者が選ぶ非常食ベスト20
第五章「賢者が選ぶ非常食ベスト20」からいくつかご紹介しましょう。
- ご飯 やはり最初のノミネートはご飯でした。
炊いたご飯をパックにしたもの、レトルトのおかゆなど。おせんべいも焼いた米
なのでこの仲間。
同様に「餅」もランクイン。真空パックの餅はもちろん、水につけると数秒で
柔らかくなる「水もどし餅」という種類もあるそうです。これは便利ですね。 - 高野豆腐、湯葉、お麩…いずれも大豆から作られたタンパク源。
非常食用には乾燥したタイプを用意しておくのがベスト。 - 乾物類 日持ちという点から乾物は優秀な非常食です。
しかも乾物にすることで栄養価も高まります。
切り干し大根、ドライフルーツなどがランクイン。さらにはドライ納豆も。
納豆菌は乾燥させても死滅せず、腸内で腐敗菌や食中毒菌を攻撃してくれます。
これは是非、備えておきたいですね。おいしいし。
ちなみに自家製ドライ納豆の作り方も紹介されていますよ。
ご覧になりたい方は本編の「第六章:非常時に力が出る究極のレシピ」で。
4.味噌の秘めたる可能性
福島の原発事故をふまえ、「放射能と味噌の関係」についても取り上げられていました。
世界初の被爆国である日本ならではの研究データが残されており、
当時、味噌汁を毎日欠かさず飲んでいた人の生存率の高さがわかっています。
チェルノブイリの原発事故の時にも日本から大量の味噌を現地に送り、成果をあげたそうです。
ここで小泉先生の一言。
「これを知らないのは日本人だけだ」とも。
この先、日本国内にある原子力発電所が被災しないとも限りません…
おまけに世界のどこかで核兵器が使用される恐れもある「今」こそ
味噌を毎日の食事に取り入れたいと思いました。
これもまた「究極の非常食」と言えるのではないでしょうか。
5.まとめ
- 「賢者の非常食」は東日本大震災の経験から2011年に小泉武夫先生が
緊急出版された著作です。 - 「非常時」は震災だけとは限りません。さまざまな状況に応じて日頃から
食生活を見直し、備えることが必要です。 - 日本人にとって非常時に力を出せる食事は何なのか、その理由についても
詳しく解説されています。 - 非常食ベスト20、持ち出し袋に入れる食品リスト、または自家製非常食の作り方
など「非常食」の情報が満載です。
さくっとかけ足でご紹介しましたが、まだまだ目からウロコな情報が
盛りだくさんですよ。
是非読んでくださ~い!
こんにちは。管理人の「えつ」です。
この頃「非常時の備え」についてよく考えます。
世界の政治情勢や地球規模の異常気象…心配なことばかりですよね。
そんな中、頼りになる一冊「賢者の非常食」をみつけました。
発酵学の第一人者、小泉武夫先生が非常食を選ぶポイントについて
わかりやすく解説してくださいます。さくっとご紹介します!