「くさいはうまい」ってどんな本?

えつ

こんにちは。ゆるっと「発酵ライフ」を楽しんでいる、えつです。
発酵食品といえば、それぞれ「特有のにおい」がつきものですよね。
この「におい」と「おいしさ」について書かれているのが、発酵学の第一人者、
小泉武夫先生の著書「くさいはうまい」です。
今回はこの本の面白さを皆さんにご紹介します。
日本で、そして世界で・・・くさい食べ物とは・・・?

1.♪発酵仮面は誰でしょう~?

この歌のフレーズを知っている人は、かなりの大人です。(笑)
原曲は「月光仮面」でしたね。かなり大人な私でさえも、おぼろげな記憶・・・(遠い目)
この月光仮面・・・ではなく発酵仮面を名乗る小泉先生は、こんな方です。

小泉武夫先生:プロフィール

・1943年福島県の酒造家に生まれる。農学博士。専攻は醸造学・発酵学・食文化論。
東京農業大学名誉教授ほか、全国の大学で客員教授をつとめる。また国や各地の自治体など
行政機関での食に関するアドバイザーを多数兼任し、執筆、テレビ出演など多方面でも活躍中。ギャラクシー賞ほか受賞多数。食に関する著作は単著で140冊以上を数える。人気エッセイ「食あれば楽あり」(日本経済新聞)はギネス級の長期連載となっている。
               ~NPO法人発酵文化推進機構パンフレットより~

ご実家が酒造家であったため、小学生の頃からおやつ代わりに酒粕を食べていたエピソードもありました。酒粕をポケットに入れて、朝から酒臭い息を吐きながら登校していたそうですよ。(笑)
さすが、発酵仮面…!

2.ユニークな語り口。でも幅広い情報が満載!

全体が3つに分けられ、タイトルの「くさいはうまい」は第2章です。
・第1章 「滋養たっぷり物語
甘酒、味噌、漬物、酒粕、納豆・・・など23種類もの発酵食品の歴史や由来、栄養や成分などが解説されています。この中にチーズもあるんですが、短い文章の中で、チーズの特徴をあげて3回もほめ称えています。こんな感じで思わずほっこりしてしまいます。

  • 消化が良く栄養価が理想的 ⇒「チーズって頼りがいがあるのですなあ。」
  • 血中コレステロールを低下させる ⇒「まったくチーズって偉いですねえ。」
  • 病気に対する抵抗力を高める ⇒ 「チーズってすごいですなあ。」

・第2章 「くさいはうまい」
世界中のあらゆるくさい食べ物に挑戦されたレポートです。
何せ、実体験ですから。説得力が違います。
発酵食品も、もちろん登場するのですが肉・魚・酒・野菜・果物・虫・・・
えっ、そんなものまで?と驚きますよ。ほんとに。
「食の冒険家」の異名も持つ小泉先生。「探究心」なのでしょうねぇ。

・第3章 「対談・発酵食品を探検する」
ノンフィクション作家の高野秀行さんと「世界のくさいもの談義」を繰り広げています。
「たい肥のにおいがする世界で一番くさい、アフリカの納豆」や韓国の「ホンオ・フェ」(魚=エイ
の発酵食品)など、相当くさそうなツワモノ達が登場します。ホンオ・フェは韓国の冠婚葬祭には欠かせない食品で、強烈なアンモニア臭だそうです。名付けて「催涙性食品!」
近くにいるだけで涙がポロポロ出てきて100人中98人は気絶するほどの臭さ!?
こんな「くさい話」が次々と登場します。

3.世界一くさい食べ物は・・・?

小泉先生が世界で一番くさいと認定した食べ物・・・それは・・・

スウェーデンの名物発酵食品なんですが、簡単に言うとニシンの缶詰。
塩をしたニシンを加熱殺菌せず缶の中で発酵させたものです。発生したガスのせいで
缶が膨張してふくらんでいるそうです。缶を見ただけで怖くなりそうですよねぇ。
このくささについて、小泉先生はこんな風に表現。

ちょうど大根の糠漬けとくさやと鮒鮓とチーズと道端に落下している潰れた生ギンナンが相俟ったような強烈なものに、腐ったニンニクが重層したようなものすごい感じの臭気

小泉武夫「くさいはうまい ~激烈臭発酵食品~ より」

私なら絶対に食べません。(笑)
発酵仮面は「地獄の缶詰」と名付けておられました。「開缶時の注意点」が4つあるそうです。

  1. 決して家の中で開缶してはいけない。
  2. 開缶する時には必ず不要のものを身にまとうこと。
  3. 開缶する前に、缶詰を必ず冷凍庫に入れて、よくガス圧を下げてから行うこと。
  4. 風下に人がいないかどうか確かめてから開缶すること。

なんだか冗談みたいな注意書きですが、この4つをしっかり守っても強烈に臭いガスが噴出する
ことは覚悟しなければなりません。
栄養的にはタンパク質・ビタミン・ミネラルに富んだ消化の良い食品だそうです。
こんなに珍しくてすごいモノですが、実はamazonで買えちゃいます。

えつ

勇気のある方はどうぞ試してみてください。
どうやら切り身になっていない「上級者用」もあるみたいです!
雨がっぱやマスク、フェイスシールドの準備もお忘れなく!?

4.他にもある「くさい」シリーズ

小泉先生にはこの「くさいはうまい(2003年)」の他にもあと2冊、「くさい」タイトルの著書があります。


・「くさいものにはフタをしない」  ~2008年 新潮文庫~
・「くさい食べ物大全」       ~2015年 東京堂出版~ 

「くさい食べ物大全」では小泉先生が食品の「くさい度数」を★の数で表しています。
★1の「あまりくさくない。むしろかぐわしさが食欲をそそる」から始まって
★4では「のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する」となり、最高ランクの★5
になると「失神するほどくさい。ときには命の危険も」!?
「シュールストレミング」「ホンオ・フェ」はもちろん★5ランクになっていました。


こんなにくさいのに・・・なぜ存在するんでしょう。
そこにそれぞれの文化や歴史があるからなんです。発酵食に関して言えば保存食としてのルーツ
があったことが大きな存在理由ですね。
「クセが強いから食べない」⇒「作り手がいなくなる」⇒「文化の喪失」となるわけですね。
発酵仮面のお言葉は続きます。「無臭は文化に非ず」
こちらのシリーズも是非ご一読を。

5.くさい!・・・それもまた魅力

世界の珍しい食べ物に目を向けてきましたが、もちろん私たちの日常にも「くさい食べ物」は
あふれているわけで・・・日本のくさい食べ物と言えば・・・

くせものベスト3ですね~。たしか「くさや」も★5ランクだったような。
「くさや」や「鮒ずし」・・・ご存知ですか?
くさやも写真で見る限りは、単なる魚の干物なんですが・・・
焼くとすごいにおいがします。いや、焼く前から。
(私の中の遠い過去の記憶が鮮明によみがえります。)


※1「くさや」は伊豆諸島の伝統的な魚の干物です。江戸時代から使い続けている魚の漬け汁が発酵によって★5つ状態になるわけですね。

※2「鮒ずし」(ふなずし)にはチャレンジしたことがありません。鮒ずしは滋賀県の発酵食品で、
他の地方にも同様に魚介とごはんを発酵させたものがあり、「熟ずし」(なれずし)というジャンルになります。和歌山県ならサンマの熟ずし、石川県にはアジの熟ずしがあります。


ただ、子供の頃はダメだと思っていたのに、大人になってみるとあっさり好きになる食べ物って
意外とありませんか?私は「納豆」や「酒粕」も苦手でした。今は大好きになりましたが。
糠漬けも、においますよね~。発酵にはクセ強めの「におい」がつきものなんですね。
そして好きになると、なぜかこのにおいがやみつきに。
なんだか「くさや」も食べてみたくなりました。ちなみに小泉先生は大好物だそうです。
瓶詰の「くさや」を見かけたので、このあたりからチャレンジしようかと思います。

まとめ

「くさいはうまい」(角川ソフィア文庫)のハイライトをお伝えしましたが、
まだまだ面白い話は、盛り沢山です。
随所に専門的な知識も盛り込まれていますが、わかりやすく書かれていて
大変読みやすい本です。ちょっとした雑学王にもなれそうですよ。
どうぞ続きは本編で。